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館城跡の発掘調査は平面的な遺構確認調査の段階から、断面観察による立体的構造把握の段階に移行しています。これまでの平面的な調査から整地層や礫層が確認されており、これらの地層と建物との関係を把握するため、調査区の中央を深く掘り下げて断面観察を行いました。
礎石の下の整地層を掘り下げていくと、礎石の下から別の礎石が現れました。
掘削範囲を広げると、整地層の下からさらに礎石が見つかりました。本来、礎石を安定させるために整地が行われるのですから、整地層の下から礎石が見つかるのは理屈にあいません。
断面をよく観察してみると、下層の礎石の上を礫層や整地層が覆っており、整地層の上から穴を掘って据えたのではないことがわかりました。つまり、下層の礎石を設置した後、何らかの理由でその礎石を埋め立てて新たな礎石を据えたのです。
礎石の上にさらに礎石を重ねたものも見つかりました。
このように礎石が上下に重複することは非常に珍しく、館城築城工事の様子を復元する重要な手がかりとなります。たとえば、下層の礎石を据えた後になって、思いのほか地面が軟弱だったため整地により地面をかさ上げして、あらためて礎石を設置し直したか、突貫工事のため、下層の礎石を掘り出す手間も省きたかったのかもしれません。