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令和5年第2回厚沢部町議会定例会の開会にあたり、町政執行への私の所信を申し上げ、議員各位並びに町民皆さんのご理解とご協力をいただきたいと存じます。
私は、去る5月9日、統一地方選挙後初の第2回町議会臨時会の、就任のあいさつで「町民一人ひとりが幸せを実感できる町づくり」をスローガンに、住みよい厚沢部町を築くための基本理念を申し上げました。
本日、町長就任後、初の町議会定例会を迎えて、豊かで活力ある町づくりのために全力を尽くして、町長としての職責を果たしていく決意を新たにしているところであります。
さて、岸田首相は、昨年の我国の出生数が80万人を下回ったことで、「社会機能が維持できるかどうかの瀬戸際」と位置づけ「次元の異なる少子化対策の実現」を掲げ、3月末に施策のたたき台を公表しました。さらに6月1日には、児童手当の所得制限の撤廃や支給期間の延長、男性の育児休業の取得促進などを柱とした「こども未来戦略方針」を公表し、今月中には閣議決定される予定です。国は過去30年間、少子化対策に取り組んできましたが、必ずしも成果は上がっているとは言えない状況にあります。どうすれば若い世代に、結婚や子育てへの希望を抱いてもらえるのか、真に有効な対策の実現が求められます。
新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが、5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行されました。感染拡大を防ぐための外出自粛要請などの措置はとられなくなり、感染対策は個人や企業の判断に委ねられることになりました。2020年1月に国内初の感染者が確認されてから3年以上の間、コロナ禍で制限されてきた社会・経済活動は正常化に向け、大きく動き出しました。国内の個人消費の増加や企業の生産活動の再開で、日本の落ち込んだ経済活動が大きく跳ね上がる飛躍の年となることを期待しているところであります。
一方で、国は、新型コロナウイルスや物価高対策として自治体に配分する「地方創生臨時交付金」について大幅に見直す方向で検討に入りました。「5類」に移行したことで社会・経済活動が大幅に改善されることが予想されるものの、地方経済はコロナの打撃からは完全に回復しているとは言い難い状況であり、一方的な削減は行わないよう、強く関係機関と連携し国に要望して参ります。
さて、世界情勢をみますとロシアのウクライナ侵攻を背景に、世界的な原油価格や物価の高騰が続いており、地方経済にも大きな打撃を与えております。本町におきましても燃料や肥料価格の高騰が基幹産業である農業を中心に大きな影響を受けており、引き続き国や北海道の対策の継続を望むところであります。
一方で長期間に亘る激しい戦闘により子供を含む尊い命が奪われるという悲惨な状況が続いております。人命を守ることを最優先に、この戦争が一日も早く集結し、平和な日常が戻ることを切に願うものであります。
今、我国では、国難とも言うべき「人口減少」が深刻さを増し、北海道でも人口が2015年からの30年間で25.6パーセント減少し、2045年には約400万人となる見込と公表されております。人口減少問題は、町の将来を左右しかねない大きな課題であることから、将来の人口動向を的確に把握し、厚沢部町ならではの道筋をしっかり立てていく必要があります。
郷土「厚沢部町」は、豊かな農産物、美しい自然、多才な人材等あらゆる分野で高い潜在能力を有する町であります。私は、これらのすばらしい資源を有機的に結合し、活力に満ちた厚沢部町を築いて参ります。
そのために、子育て世代が住みたいと思う町づくり、足腰のしっかりとした産業基盤の構築、さらに住民福祉の向上を図るために、日々英知を傾け、職員と一丸となって以下の課題解決に全力で取り組んで参ります。
人口減少社会の到来は、社会経済に大きな影響を及ぼすことから、子育て世帯に対する支援のさらなる充実を図ります。具体的には、小中学校の給食費の無料化、認定こども園の完全無償化、道立江差高等学校への通学費の助成を実施します。さらに公営塾についても、引き続き運営をして参ります。
全国的にも有名となった保育園留学については、本格的に取組んで参ります。町内で移住体験を希望する子育て世帯が認定こども園を一時利用し、保護者は、ちょっと暮らし住宅でテレワーク勤務をするという保育園留学は、大変な人気となっております。今年度は、受け入れ体制拡充のため住宅2棟を整備する予定で、子育て世代の交流人口のさらなる増、そして、最終的には移住・定住に繋がることを目指します。
現在、本町の総人口に占める65歳以上の高齢化率は40%を超え、増加の一途をたどっております。このような状況の中、本町でもひとり暮らしの老人世帯や老人夫婦世帯が増えております。そのため在宅福祉に重点を置き、各地域での「ふれあいサロン」の実施や、社会福祉協議会の運営を支援するなど、自助、共助、公助のバランスを図りながら、町単独の高齢者生活支援事業を継続し、安心な暮らしを支えて参ります。さらに高齢者が元気で意欲をもって生活ができるよう生涯学習の推進や老人クラブの活動など交流の場を提供し、生きがいづくりを進めて参ります。
また、障がいのある方が自分らしく地域で暮らしていくために、医療・福祉両面から障害者福祉対策に取り組んで参ります。一人ひとりの個性や特性に合わせた支援を行う、こども発達支援センターの充実にも努めて参ります。
公共交通や、町が提供している移動支援サービス等は、通勤、通学、通院及び買物等、町民の日常生活に欠かすことのできないものです。しかし、高齢化による運転免許証の自主返納や人口減少等に伴い、身近な移動手段としての新たな交通体系の確立が必要です。
このため、厚沢部町地域公共交通計画に基づいて、町民の移動手段となる公共交通の利便性・効率性の向上を図り、まちづくりと一体となった持続可能な地域公共交通ネットワークの再構築を図って参ります。
持家建設奨励金や誕生祝金の拡充、さらには現在計画されている道営住宅の早期完成を目指します。さらに保育園留学の拡充を図り、移住・定住に結び付けて参ります。また、公営住宅も長寿命化計画を策定し、計画的な公営住宅の供給目標を定め整備していきます。
本町の基幹産業である農業を取り巻く環境は、ロシアのウクライナ侵攻や円安等の影響を受け、燃料価格や農業資材価格の高騰が、農家経営を圧迫しております。肥料価格の高騰につきましては、繰越明許費として肥料代の助成を予算措置しており、国事業への上乗せ補助として農家への支援を着実に実施して参ります。しかし、本年度においても状況は大きく変わってはおらず、国や道の情報をいち早くとらえ、今後の支援についても関係団体と協議し、検討して参ります。
農家戸数の減少も続いております。本町の優良な農地を維持していくためには、農地の基盤整備や集約化、農家経営の規模拡大が必要となり、それに対応するためスマート農業の導入促進を図ってまいります。
就農支援対策としまして、担い手育成対策協議会等関係機関による相談体制の充実や、人・農地プランの地域計画策定の中で就農地の確保・把握に努めるとともに、国の助成制度を活用するなど就農しやすい支援体制の充実を図ってまいります。
町単独事業として農業共済掛金の助成である、農業生産安定化特別対策事業費補助、地力増進対策事業費補助、農道整備事業費補助などを継続し、農業経営の安定化を図ってまいります。
また、昭和45年以降半世紀以上続いた、いわゆる転作制度の見直しが発表されました。その後例外規定が設けられましたが、交付対象の厳格化に変わりはなく、今回の制度改定が離農を増やす原因とならないのか心配されるところであります。
国では現場の課題を検証しつつ見直しを進めるとしており、道においてもオール北海道での検証・対応に取り組んでいるところでありますが、町といたしましても、本町農業の課題を検証しつつ、持続可能な厚沢部農業の将来像を描くことができるよう関係機関と連携し取り組んでまいります。
本町の豊かな自然環境の中にあって、面積の約8割を占める森林は、貴重な資源でもあります。
町有林にあっては、除間伐、枝打ち、下刈りなどの撫育管理事業を適切に行って参ります。
また、民有林にあっては積極的な森林整備を推進するため森林環境譲与税を活用し所有山林にかかる意向調査、民有林の下刈りや除間伐事業への助成、林道、作業道の開設及び維持補修整備を実施し、森林としての機能を維持できるよう支援を行います。
商工業については、人口減少やインターネットを利用した商品購入等が地元消費減退を招いており、また、高齢化の進行とともに買物弱者の増大が心配されているところです。しかし、新型コロナウイルスの5類移行後は、飲食業や観光業にもコロナ前と同様の経済活動が行えるように、引き続き商工団体の育成と中小企業の経営安定を継続支援するとともに、商工会と連携し、活性化への振興策を検討してまいります。
観光については、オートキャンプ場「ハチャムの森」、「うずら温泉」、そして「道の駅」の利用度が増加していくものと期待しています。特に道の駅は、檜山の玄関口に位置し、町の情報発信の拠点としての役割は重要で、令和4年度には新商業施設が完成し、既存の物産センターを含め、多くの人が集う道の駅としてスタートしたところであり、集客力を一層高めてまいります。
また、「アウトキャンパス」や「ちょっと暮らし」事業の継続的な展開で、交流人口・関係人口の拡大を図るほか、素敵な過疎づくり株式会社への委託事業により、厚沢部町の応援団員獲得拡大にも努めてまいります。観光協会の育成や各種イベントへの助成なども継続的に支援して参ります。
町内では、健康診断の受診率が低いことから、 がん等の重大疾病の早期発見が遅れ、重症化リスクが高まっています。病気は早期発見・早期治療が重症化を防ぐ原則であります。受診率の向上を促すための啓発活動や受診料の軽減対策を行って参ります。さらには、3人に1人が発症するといわれる帯状疱疹についても、有効とされるワクチン接種への助成も行います。導入後10年以上が経過している厚沢部消防署の
救急車についても高規格を有した車両の更新を図って参ります。
また、町内唯一の医療機関であります国民健康保険病院は、医師・医療スタッフの確保をしながら良質な医療の提供、経営改善に努めていくとともに、南檜山メディカルネットワーク構想を踏まえ、檜山南部の医療機関と連携し、さらなる地域医療の充実に努めて参ります。
現在、本町の防災無線は移動系といわれる方式で整備されています。令和2年度に電波の周波数帯の変更により多額の費用を投入し基地局等の設備を更新したところですが、近年の豪雨災害により国の指針においても、各世帯に無線機を配置する「同報系」の整備に努めるよう示されたところであります。最近では、これまでと違った方式の受信機も出てきていることから、先進自治体の例も参考としながら、導入に向けて検討して参ります。
政府がカーボンニュートラル宣言を行った令和2年10月から2年半が経過し、全国各地域で2050年カーボンニュートラル達成に向けた動きが加速しています。
当町においても今年1月にゼロカーボンシティ宣言を行い、脱炭素社会の実現に向け、長期安定的なエネルギー対策として、太陽光発電や小水力発電などによる再生可能エネルギーの地産地消を促進し、基幹産業である農業振興を中心に、持続可能な地域づくりを推進していきます。
延期となっていた地域新電力会社の設立や、8月に予定されている環境省の第4回脱炭素先行地域への申請に引き続き取り組み、国の補助金などの特定財源を確保しながら再生可能エネルギーの導入を積極的に進めて参ります。
まず、生活交通対策であります。
地域住民の日常生活に必要不可欠な公共交通路線である国道227号は、檜山管内の重要路線で北海道新幹線新函館北斗駅に接続する幹線国道に位置付けられており、高速交通体系の骨格を形成する上で、大きな役割を担う路線であります。
また、高度な医療を函館圏に依存する南檜山地域にあっては、いわば「命の道」でもあります。
狭小トンネルの解消について、これまで国へ要望し、今年度より本格的に掘削工事が着手され、早期の完成を目指します。
また、乙部厚沢部線江差町界付近の道路低地解消は来年度、事業が完了し、同じく赤沼地内歩道整備につきましても、早期整備を要請したところ、用地調査が進められました。
町道では、適正な維持管理及び冬期間における除排雪体制の整備を図り、通行に支障が生じることのないよう、住民の交通と安全を確保してまいります。
また、橋梁については、長寿命化修繕計画に基づき、順次工事を実施してまいります。
本町の財政は、これまでの行財政改革などによって、健全な財政運営を維持しておりますが、町税等の自主財源に乏しく、歳入の過半を占める地方交付税の行方次第では、極めて厳しい状況となります。限りある財源を最大限に生かす創意工夫と柔軟な発想をもって、事務事業を検証し、効率的な施策の展開、質の高い行政サービスの提供を目指します。
職員、一人ひとりの行政能力の向上を図るため、職員研修の充実を図り、質の高い行政サービスを提供して参ります。
これまでどおり、厚沢部町情報公開条例に基づき、町の透明性の確保に努めます。
教育行政の詳細につきましては、教育長から方針が示されますが、教育委員会とともに学校や社会での教育活動が望ましい環境の中で展開されるよう、努めてまいります。
また、町民の皆さんが生きがいのある生活を送ることができるよう生涯学習、生涯スポーツ等の充実にも努めて参ります。
以上、私の町政執行に対する所信と施策の一部を申し上げました。
町民の皆さんの期待と信頼に応えるべく誠心誠意、課題解決に向けて邁進する所存でありますので、議会並びに町民の皆さんには、より一層のご理解とご支援、ご協力賜りますよう宜しくお願い申し上げます。